澁川祐子
ライター、編集者
ライター、編集者。1974年神奈川県生まれ。東京都立大学人文学部を卒業後、フリーのライターとして活動する傍ら、『民藝』(日本民藝協会)の編集に携わる。現在は食や工芸を中心に執筆。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎 人気メニュー誕生ものがたり』(新潮文庫)、『味なニッポン戦後史』(インターナショナル新書)。編集に『スリップウェア』(誠文堂新光社)、山本教行著『暮らしを手づくりする 鳥取・岩井窯のうつわと日々』(スタンド・ブックス)、山本彩香著『にちにいまし ちょっといい明日をつくる琉球料理と沖縄の言葉』(文藝春秋)など。
Studyおいしいとは何か? 「味なニッポン戦後史」から食のリテラシーについて考える。
Comment- 勉強会を終えて -
おいしいものが食べたい。あるいは、あの料理美味しかったな。こんな言葉を日々つぶやいてはいないだろうか。そして、その”おいしい”とは一体何なのか。とても身近でありながら、深く考えたことがなかったこの問いに、澁川さんはとことん向き合い、考察し、本を書き上げた。「味なニッポン戦後史」は世相とともに変わりゆく日本の食嗜好を、うま味、塩味、甘味、、といった基本五味に辛味、脂肪味を加えた”味”を切り口に食の流行、そして文化を読み解いている一冊だ。
今回の霞ヶ関ばたけでは「おいしいとは何か」を切り口に、おいしいを構成する様々な要因と、うま味の歴史、フードファディズム(特定の食品や栄養素が健康に与える影響を過大評価したり信じたりしていること)についてもお話しいただいた。今や”おいしい”に溢れる日本に生きることは、「何を食べればいいのか」という悩みに直面するではないかということ。そして、食を「正しいか正しくないか」で判断することの危うさや、そもそも食に「正しさ」はあるのか?という観点にも触れた。
日々の食を選択することは、時に楽しく時に難しい。
誰しもが与えられる食という時間を、何を選んで食べ、あるいは食べないという選択をするのか。また、誰と、どんな風に過ごすか。毎日の選択を積み重ねで自分が構成されていくこと、当たり前かもしれないがまた一方で何かチャンスを秘めた食について、今一度考える時間になった。(望月)
澁川祐子
ライター、編集者
霞ヶ関ばたけへのメッセージ
おいしいとは何か。永遠の謎ともいうべき直球のテーマに、当日はたくさんの人が集ってくださり、日々の食に対する関心の高さを実感しました。
歴史を通してみると、食べることは個人的なことでありながら、一方で社会的なことでもあるとつくづく思い知らされます。無数に選択肢があるなか、環境や情報に左右されながら、毎日、私たちは何かを口にしている。そんな揺らぎもまた、人間が食べるということの一側面なのだと、参加された方々のさまざまな意見が物語っていました。
食について語り合うこと、それがひいては多様な食の世界を担保する小さな一歩になるのではないかと思います。霞ヶ関ばたけさんはまさにそんな場の一つではないでしょうか。素敵な場を設けてくださった運営の方々、そして参加してくださったみなさま、ありがとうございました!