井上敬二朗
稲作本店
代表
1979年生まれ 野村證券、有限責任監査法人トーマツを経て、環境ベンチャーに参画後、岡山にて有機農業とカフェを融合させたsennro caféを起業、5年間経営。
妻の父が倒れたのを機に、那須へ移住。現在は家業の米農家を引継ぎ、お米専門ブランド【稲作本店】を立ち上げ、お米販売や米粉菓子「田んぼのカヌレ」・無添加ポン菓子「イナポン 」等の製造・販売を行っている。[経営管理修士・MBA]
R4年度
農水省&内閣官房:「ディスカバー農山漁村の宝AW・審査員特別賞」受賞
R3年度
農水省:「地産地消優良活動表彰・全国地産地消推進協議会会長賞」受賞
栃木県:「とちぎ地産地消夢大賞・優秀賞」受賞 めぶき
FG:「めぶきビジネスAW・奨励賞」受賞
稲作本店公式HP https://farm1739.com/
Study米を作るな、未来を創れ!〜中山間地域の農のこれから〜
Comment- 勉強会を終えて -
証券会社や監査法人、カフェの起業など、異業種を歩んでこられた井上さんが農業を始め、課題に感じていることが「農業の関わりしろ」が少ないことだという。
100人に1人が農業者という割合の我が国において、一般の消費者が農業の課題を理解したその先に「何をすれば良いのか?」という問いに対して、「応えていきたい」という井上さんの強い想いが感じとれたし、わたし自身「農業者以外のいち人間」として「何ができるのか?」を考えた先に、CSAなどの取組に関心をもった経緯がある。
今回の霞ヶ関ばたけは「中山間地域の農について考える」をテーマに行い、規模拡大or利益拡大(必ずしも二者択一ではないが)の中で、中山間地域は前者の戦略はとりづらく、稲作本店さんの戦略が中山間地域の農をつくっていく一つの光のように感じた。
ただ「戦略」という言葉は、井上さんには馴染まない。
井上さんは日本の原風景の価値を体で感じていて、それを事業としても成立させるために「田んぼの価値の最大化」を掲げて日々生産と販売を続けている。心から共感するとともに、どこまでその農業が展開していけるのか、稲作本店さんのブランド化(再現性)に今後も期待したい。
1年前に那須の田んぼで出会った稲作本店の井上敬二朗さんの話を大手町で聞くことができて本当に良かった。
井上敬二朗
稲作本店
代表
霞ヶ関ばたけへのメッセージ
今回、「霞ヶ関ばたけ」で皆さまと顔を合わせて、それぞれの想いを議論でき、やわらかい光を感じることができました。ありがとうございました!
僕が現時点でお話できるのは、農業界の成功ストーリーではありません。
「その昔、東京で働いていた人間が、ある日お米農家になってみて。」という普通の一人の人間としての話です。
就農して最初の年、実際の田んぼを前に感じた、あまりにも厳しい稲作の現実。悔しくて、はがゆくて、両親とたくさんぶつかり合い、いっそのこと農業を辞めてしまおうかと夫婦で涙した日から5年が立ち、いまは全く違う景色が見えています。
どんなきっかけで農業に光を感じはじめたのか、正確には覚えていませんが、これまで自分達が人生で学んだ「仕事のやり方」や、考えてきた「働く意味」を振り返り、一度、東京を見てきた人間が、田舎で農業をするという意義や責任を感じ、『ここでやり残したくない』と思い返し、そこから新しい気持ちになったように思います。
次第に、人から人へ僕たちの活動が広まり、たくさんの方が声をかけてくださって、お米や商品を食べていただいたり、農園を見にきて応援してくださったり、メッセージをいただいたりするうちに、農業という仕事がいかに人と人で成り立っているか、そして「対話」があることが、未来への希望につながっていくかを実感させられてきました。
だからこそ、厳しいと言われる農業にあって「コミュニケーションの場」をつくっていくことが何よりも大切だと思っています。僕たちが現場で感じる危機感や葛藤は、みんなの対話によって前向きなものにしていくことができる。
「霞ヶ関ばたけ」は、そんな可能性を感じさせてくれる会でした!
「農業」は、特定の人のための話題ではなく、それぞれの人と人の結びつきだと思います。
何を食べて、何をつくるか、大切な家族や友人のため、地域のため。これは田畑にいても、キッチンにいても、考えることは同じです。
農家だから、消費者だからという垣根ではなく、未来の風景や食卓がどうなっていてほしいかを、一緒に考えていけたら、農の未来は、決して暗いものではないと思っています。
その結びになるきっかけをつくってくれた松尾さん、事務局のみなさま、本当にありがとうございます!ご指名いただけたこと、とても嬉しいです。
僕たちの取組みは、まだまだ始まったばかりですが、「米を作るな、未来を創れ」の精神で、これからもニッポンの原風景をつないでいきたいと思っています。
皆さま、気持ちの良い季節になったら那須の田んぼにも是非お寄りください。
引き続き、よろしくおねがいいたします!
稲作本店 井上 敬二朗